『HAPPY BIRTHDAY DEAR・・・』












男6人によるどんちゃん騒ぎは結局夕方から日付変更線を越えるすれすれまで続いていた。

皆食べ過ぎと酒にやられ、そのまま倒れ込むように寝てしまった。

この片付けは俺がするのかと、自分のために催された誕生日のあとの部屋を見回す。

「派手にやったな・・・いつもの事だがな・・・」

そのまま寝てしまった5人に毛布を掛け、一人縁側で佇んで(たたずんで)いた。

「・・・・・・・・」

「凍矢・・・」

「陣?起きてたのか?」

「凍矢は?・・・」

「ちょっと眠れなくてな・・・」

「・・・どうかしただか?」

「さっきまでの興奮が冷めやらないのかな・・・」

「じゃあちょっと付き合って欲しいだ。」

「・・・?」

いつもならいびき全開で寝てる時間なのに・・・

















「陣?どこに行くんだ?」

「うん?もうちょっと・・・」

俺を抱えてどこかに向かって飛んでいく。この辺はそんなに寒い地帯ではないが、さすがに空の上ともなれば

自分には寒いと感じなくても、普通だったら寒いはず。

どこへ向かっているのか?

陣は行き先を言わない。

・・・まさか空に道という物は無いが道に迷ったのだろうか?

「凍矢ー、寒くないだかー?」

「俺に寒いと言う感覚は皆無に近いぞ?お前は寒くないのか?」

「平気だべ〜♪」

俺に言わせれば寒くないのか?と言う疑問より、眠くないのか?と言う素朴な疑問が浮かぶ。

・・・このまま寝るなよ?陣・・・

それに・・・いくら飛びやすいからって・・・姫様だっこはないだろう・・・

陣は何とも思わないだろうが、俺は恥ずかしくてそのまま陣の胸に顔をうずめていた。

そうだ・・・風が強いからこういう状態になってるんだ・・・そうだ・・・

そういう事にしておこう・・・だから俺は周りがよく見えないし、分からない。

分かるのは暗いと言う事だけ・・・

目を瞑って(つむって)いても同じだな・・・

俺は陣の向かおうとしている場所に着くまで目を伏せる事にした・・・

















「凍矢ー、着いただよー。」

「ん・・・着いたって・・・」

別段さっきまでの光景と何一つ変わらない・・・

「凍矢、上、上。」

「上って・・・っ・・・」

俺は陣の胸の中からモゾモゾと顔を上げた。

「・・・・ぁ・・」

初めて見たわけではない・・・

滅多に見られないものと言うわけではない・・・

けど・・・










「ここから見ると星おっきいべ?」

夜空に浮かぶ満天の星・・・

陣に抱えられて、雲の上から見るのは初めてだった。

いつもは雲の上を見て、その上の星を見ていた。

今は雲の上から見ている。

星だけが見える。

星ってこんなに大きかったんだな・・・

「キレイだべ?ずっーっと凍矢に見せたかっただよ。」

「何だって今日見せる気に・・・」

「だってやっぱ誕生日に見せたいし・・・」

「終わったぞ。俺の誕生日。」

「あうっ・・・1時間延長!なっ!?」

「誕生日に延長も短縮もあるか。」

「うぅ・・・だって夜中じゃねーと星見えねーし・・・」

「それはそうだな・・・けど・・・」

「ん・・・?」

「いつでも見られるものじゃないしな・・・」

「えっ・・・?星はいつも空にあるべ?」

「こうやってお前に抱えられてないと見られないだろ?この光景はさ・・・」

「気に入っただか?だったらいつでも連れてってやるだぞ?」

「俺を抱えて飛ぶの辛いだろ?」

「んーん。ぜーんぜんっ。オラ強い奴と戦うのも好きだけど凍矢も大好きだべ!」

・・・俺はついでか・・・?

「それに・・・」

「何だ?」

「こうやって飛んでたらずっとぎゅっとくっついてられるべvv」

「・・・・・(///)陣。」

「あっ!あのちっこいの鈴駒みたいだな。」

「じゃあ、あの無駄に光ってるのは鈴木か?そのとなりで赤く光ってるのは死々若か?怒りでメラメラと・・・」

「あのでっかいのは酎な。んで凍矢はあれ。」

「あれって・・・」

陣があごで示したのは月だった。

「凍矢キレイだから♪」

「・・・俺はそんなんじゃない・・・それに月は自分で光ってるんじゃない・・・太陽のせいで明るいんだ・・・一人では光る事も出来ないんだぞ・・・」

「ふーん・・じゃあオラ太陽な♪いっつも凍矢のこと照らしてやるだ!」

「・・・っ!何言って・・・」

「だって凍矢太陽にしちゃ明るすぎるだ。」

「そうじゃないだろ・・・」









俺は闇でいい・・・それが一番似合う・・・









「ぶー、似合うのに・・・凍矢の欲しかった光って何だ?」

「何を今さら・・・お前だってそれで一緒に武術会に出たんだろ?」

「そうだけどさ、凍矢が欲しいって言うから・・・オラもと思ったんだけど・・・」

「何だ?」

「オラ強い奴と戦いたかったし、望みだったら凍矢がいればいいって・・・

あの島は純粋にいいなぁーって思って・・・」

「・・・・・」

「うーん、オラ難しい事ってよくわかんねーし、凍矢みたいに深く考えれねーけど、凍矢がいればいいって事!そーいう事!!」

「一人で完結させるな・・・」

















光の後に求めるものか・・・

何だろうな・・・

答えはもうすぐ・・・

















「陣・・・」

俺は陣にぎゅっとしがみついた・・・

「凍矢?寒いだか?帰るだか?」

「・・・・・」

















月も星も朝に向かって逃げていく・・・

お前は・・・

俺の傍から離れるなよ?

朝が来ても夜が来ても・・・

















俺も・・・

お前から離れないから・・・

















「陣・・・また連れてきてくれ・・・ここに・・」

「ん・・・オラは毎日でもいいだよ?晴れてればいつでも・・・」

「違う・・・ここだ・・・」

「ん・・・?」

















俺は陣の首に腕を回した・・・






そして・・・






俺がいたいのは・・・






ここなのだと・・・






陣に教えた・・・











−END−


















ギャグ無し!?ノーギャグ!?初!?初ノーギャグ!?シリアスって呼べる!?(何故ここでテンションを上昇!?)

いやぁー、どうしても書きたいなーって思ってたんですけど普段はと言うかいつもギャグじゃないですか。そんな

奴が今更シリアス調書いてもねぇ・・・?なわけでして・・・

だが陣×凍を書くにはここしかえねぇ!!と思い立ち書いてみました。

書くにあたってやっぱり凍矢から『光』は切り離せないなーと思って光りネタ(しめ鯖ではない)。

私の中では凍矢の言っている光は陣そのものです・・・

せっかくのシリアスなのだからここで切りたい・・・でもオチも付けたい・・・でも・・・

我慢しました。これっきりかもしれませんものね・・・シリアス・・・汚さずにおいておこう・・・

どうせこのふざけたあとがきで充分汚れているのだから・・・

珍しく背景もシリアスっぽくしてね・・・

一周年からずいぶん過ぎてしまいましたが一周年です!!(キングオブ強引)

これからも『猿の末裔』をよろしくお願いいたします!!    〜殿〜