『北風と太陽とその他諸々』

蔵『昔々、ある所におじさんの旅人が歩いておりました。』

黄「蔵馬、おじさんではない。お兄さんだお兄さん。」

蔵『えっ?何でお兄さんなのさ。兄弟とか姉妹いたっけ?』

黄「そうじゃなくて、私はお兄さんって言った方が無難な年齢だろうが。」

蔵『嫌ですよ、俺は嘘つきになりたくないです。』

黄「何が嘘だ!いいから私の事はお兄さんと呼べ!ほら、最初からやり直し!」

蔵『はいはい。えっと、昔々、ある所に自分の事をお兄さんだと自己主張して止まない旅人のおじさんがいました。』

黄「自分だって千歳だろ!私だって少しくらい若くしたっていいだろ!」

蔵『はい?俺は繊細ですよ?』

黄「・・・未だにこの童話シリーズを演じなければならない理由が分からないが、いい加減誰かナレーション替われ・・・」


蔵『旅人のおじさんが歩いているのを暇そうな六人が見ていました。』


黄「話を聞け話しを・・・」

凍「して、俺達はいきなり暇人扱いか・・・」

鈴駒「とは言っても否定できないのも事実なんだけどね。」

死「何でまたこんな下らない事を・・・」

陣「そっか?オラ結構面白いけどな♪」

死「お前は変な役をやってないからそんな事が言えるんだ。俺は何度女装させられた事か・・・」

陣「でも死々若似合ってただよ?」

鈴駒「それは言えてるね。アレがもし酎だったらこのサイトの童話シリーズ即お蔵入りだよ。」

凍「お蔵入りと言うより牢獄行きだと思うが・・・」


蔵『ハイそこ!私語は慎む!えっと、どこまで・・・あっ、ここだ。えー、暇な六人はある事を思いつきました。』


酎「なぁ、誰があいつのコートを脱がせられるか勝負しねぇか?」

鈴木「嫌だ!私はあんな中年オヤジのコートより死々若の着物を脱がせたいぞ!」

斬!

凍「鈴木・・・いい加減斬られると分かっている台詞を言うのは止したらどうだ?」

鈴木「ふっふっふ・・・私は斬られれば斬られるほど味が出る男なのだよ・・・」

酎「スルメかオメェは。」

陣「懲りないだな。」

凍「別に奴のコート脱がしても意味は無いだろ。」

鈴駒「あのコートカシミアだってさ。しかも最高級の魔界産ホワイトカシミア。

「皮膚ごと剥いでやる・・・」

陣「凍矢・・・なまはげみたいな顔になってるべ・・・」

鈴駒「凍矢?脱がすだけでいいのよ?追い剥ぎになっちゃダメよ?」

鈴木「いや、奴にカシミアなぞもったいなさすぎる。奴にはトレーシングペーパー特大サイズで十分だ。」

酎「スケスケかよ。」

鈴木「ちなみに、死々若は私があっためてやるからコート買わなくていいからな。」

斬!!

死「鳥肌が鳥肌を立たせるような事ほざくな。」

鈴駒「鳥肌が鳥肌をって・・・」

死「俺はやらんぞ。これ以上下らない事に関わりたくない。」

凍「俺も出来れば辞退と言う方向で・・・」

陣「ダメだべ!ちゃんとやるべ!お客さんが見てるだ!」

死「客?どこに?」

陣「えっと・・・多分・・・あっちとこっち・・・」

死「いないぞ。客。」

陣「んーと・・・とにかく!録画して修羅が後で見るだ!」

黄「ああ・・・私も父親らしい所を息子に見せたいものだ・・・」

躯「安心しろ。どんなに情けない男だとしてもそれはお前と修羅が親子関係である事を否定するものじゃない。」

「貴様!出てきて一発目の台詞がそれか!!」

躯「他に言う事もねぇよ。」


蔵『はいはい、皆さん、談笑はそのくらいにしてお話進めますよー。早く脱がせてくださーい。』


黄「どこが談笑だどこが・・・」

鈴駒「じゃあオイラから行くね。」


蔵『まずはヨーヨー使いの鈴駒が旅人のコートと印鑑を奪い去ろうとしました。』


黄「脱がせるだけだろう!脱がせるだけ!!」

鈴駒「ホラホラ、よそ見してると剥いじゃうよ!やあっ!!

黄「ふふふ・・・甘いぞ、伊達に私も三竦みと呼ばれた男では無いぞ!」

陣「ありゃー、見事に鈴駒のヨーヨーよけてるだな。」

死「とても中年オヤジの動きには見えないな。」

躯「子供相手に本気出して威張ってどうするんだか。」


蔵『外野の応援もといヤジに負ける事なく旅人は鈴駒のヨーヨーをかわしていきました。』


鈴駒「ん〜、歳の割にスピードあるな〜。お手上げだよ〜。」

死「確かに歳の割にはな。」

鈴木「そういう事を口に出すものでは無いぞ。歳の割に頑張ってる奴を多少は称えねばな。」

躯「子供の運動会の父兄参加の競技に出て翌日絶対筋肉痛になるタイプだな。」

陣「運動会シーズンのお父さんには湿布が欠かせないべ。」

凍「前日にはカメラのフィルムやバッテリーを確認しておかねばな。」

黄「フッ・・・いささか外野がやかましいが、これしきの事では私のコートは脱がせられんぞ・・・」

鈴駒「あ〜、疲れた。まぁ、どのみちあのオッサンが着たコートならいらないし。」

鈴木「そうだぞ、もれなく加齢臭がついてきてしまうぞ。」

酎「そういや風の噂で流石ちゃんが今年の冬に向けて手作りのマフラーを編んでるって聞いたぜ?」

鈴駒「えっ!?マジで!?いや〜、参っちゃうな〜。」

躯「ほぉー、なかなかやるじゃないか。」

陣「良かっただな鈴駒。今年の冬はぽっかぽかだべ♪」

黄「あ〜、オホン、ゴホン!」

凍「何だ黄泉風邪か?」

死「風邪を引くのは構わないがこっちに菌うつすなよ?」

黄「いやぁ!次の挑戦者は誰かな!はっはっは!待ちくたびれちゃったな!!」

陣「あ、そっか。次誰だっけ?」

酎「俺だ俺〜。よっし!そのコートひっぺがして質屋に持ってって今晩の酒代に換えてやる。」

凍「リアルだな・・・」

鈴駒「でも汗くさいから一回クリーニング出さないとダメだね。」

死「酎が着るなら問題はあるまい。」

酎「よぉ〜、そこ行く中年の旅人さんよ!」

黄「何だ?そこの中年の酔っ払い。」

酎「おまいさんのコートをちょいといただきてぇのよ。」

黄「だからこの話は脱がせる事に意義があるのであって、誰も奪えとは言ってないだろ・・・」


蔵『いえ、台本には"奪う"でも可と書いておきました。』


「物語の趣旨を変えるな!」

酎「まぁまぁ、『毒を食らわば台所まで』って言うだろ。」

黄「皿だ皿!!どこまで食べる気だお前は!」

陣「あれ?それって『団子を食らわば串まで』じゃなかったっけ?」

凍「陣・・・後で俺とことわざの勉強しような・・・」

飛「全く・・・それを言うなら『焼き鳥を食らわば串まで』もしくは『ヨーグルトを食らわばフタまで』だろ。」

躯「お前本気で言ってるのか?」

酎「つーワケで、俺と酒の飲み勝負して俺が勝ったらそのコート戴くぜ!」

黄「なら私が勝ったら何が得られると言うのだ?」

酎「んー?そうだな、じゃあ俺のパンツでもやるよ。おめぇとならそんなサイズ違わないだろうしよ。」

黄「何故勝ったのに負ける事より不名誉な賞品を受け取らねばならんのだ!」

鈴駒「確かにイーブンでは無いよね。」

凍「勝つ事も負ける事もままならない・・・」

陣「酎のパンツなんかもらっても嬉しくないだべ。」

鈴木「死々若の下着は欲しいが酎の下着は洗濯機にとってハルマゲドンに等しいぞ。」

黄「だいたい、酒飲みなんて貴様に有利すぎるでは無いか。それに私は今日ちょっと二日酔い気味で・・・」


蔵『おや?そんな事はシナリオにはありませんねー?誰に断って飲みに行ったんでしょうねぇ・・・?』


「ゲホッ、ゴホッ!!いやぁ、最近めっきり冷える様になってきてな!」

躯「親子関係がか?」

「外の気温だ!!」

鈴駒「まぁ、南極ばりに冷え切った親子関係はおいといて、勝負方法が酒飲みで、負けたら酎のパンツ贈呈じゃ

酎に有利すぎるね。」

凍「酎は負けても痛くも痒くも無いからな。」

死「臭くはあるがな。」

陣「うーん、平等にかつ、二日酔いでも関係無い勝負方法だべか・・・」


蔵『ああ、皆さん、別に二日酔いの事はどうでもいいので。お気軽に耳元で大声でも出してやってください。』


黄「お前・・・絶対狐じゃなくて鬼だろ・・・」

鈴木「うむ・・・この二人では美しさ対決は出来ないし・・・」

死「やってどうする。」

鈴駒「じゃあ、ここは国民的解決方法と言うことでじゃんけんにする?酎、レオリオ並にジャンケン弱いし。」

陣「レオリオって誰だべ?」

黄「じゃんけんか・・・よかろう。その勝負受けてたとう!」

鈴駒「平等っしょ?」

死「確かに不公平は感じないが、何かがずれている気が・・・」

酎「わーったわーった、しゃあーねぇな!オラ行くぜ!ジャンケン!」

「ポン!!」

〜酎=チョキ・黄泉=グー〜


蔵『おっ!がめつい黄泉はグーを出しそうでグーを出しました!コレで二人勝ち抜きでーす!』


黄「いつもながら一言ナレーションが余計だが、今度も私の勝ちだな。」

鈴駒「ダメじゃん、酎。あいつは如何にもグー出すタイプでしょ。」

死「握った物は絶対放しそうに無いしな。」

鈴木「私もけしてお前を離したりはせん!!」

斬!!!

鈴駒「ま、中年同士のジャンケンってあまり見られない代物かもしれないし。」

陣「むー、なかなか手強いだな・・・」

凍「相当無理して買ったなあのコート・・・」

鈴駒「コートは脱がない、給料は上げないくれない、息子に頭が上がらないと。どうしようも無い男だね。」

死「お前達はまわりくどく行くから駄目なんだ。こういうのは単純に『引いて駄目なら』の精神でいくものだ。」

凍「なるほどな。」

陣「しんぷるいずべすとだべ!でもジャンケンってまわりくどいだか?」

死「そういう事で次の相手は俺だ。」

黄「ふっ・・・次は貴様か。残念だが貴様の剣技では私のコートを脱がす事など出来まい。」

死「四の五の言わず脱げ。」刀ジャキーン

鈴駒(引いて駄目なら脅してみろ!?)※正しくは『引いてダメなら押してみろ』でございます

「待て待て待て!!善良な旅人に刀を向けるとは何事だ!!」

死「貴様は善良じゃないし、そもそも俺は正義と鈴木が嫌いでな。」

鈴木「死々若!そこの中年キャラバンはどうでもいいとして!いくら素直じゃないからってそこまで言うか!?」

死「どこまででも言ってやる。」

凍「死々若!気持ちは分かるがコレは一応子供向けの舞台だぞ!?」

飛「今更だろうに・・・」


蔵『書いた俺ですら忘れてましたね。死々若、刀引っ込めてください。』


死「ちっ・・・」

鈴木「こうなったら真打ちの私が登場せねば!」

黄「誰が来ようと結果は同じだ。して?貴様は何で挑んでくるつもりだ?」」

鈴木「野球拳をしようではないか!」

凍「お前・・・小説本の方で出来なかったからってこんな所でやろうと言うのか・・・」

鈴駒「ていうかもうジャンケンやったじゃん。」

鈴木「何を言う。ここで私の美しい肢体の一部でも読者の方にお見せせんと苦情が来るだろう。さっ、死々若も一緒に・・・」

斬!!!!!

蔵『ダメですよ、下品なのは禁止。』


鈴駒「斬り捨て御免はよくて野球拳はダメってのも何だか変な感じだね。」

酎「どうせ脱いでも活字だからわかんねぇけどな。」

黄「ふっふっふ・・・何やら不戦勝になってしまったが、一人で手に負えないなら二人がかりでも構わんぞ?」

躯「不戦勝とジャンケンに勝ったぐらいで威張るな。」

死「こういう奴に限って靴下裏表にはいてるんだ。」

陣「よーし!こうなったらオラの風で黄泉を吹っ飛ばしてやるだ!!」

黄「だから!何遍言わすんだ!この話は倒すとかじゃなくてコートを如何にして脱がすかがポイントだと言うのに!」

躯「別に倒してから脱がせたっていいじゃないか。」

凍「二人がかりと言うのが納得いかないな・・・」


蔵『あっ、ご心配なく。陣の風と凍矢の冷気を合わせて"北風"と言う設定ですから。』


鈴駒「なるほどね。いよいよ本当の『北風と太陽』らしくなってきたね。」

死「もう完全に別の物語と化しているがな。」

黄「ふん!もう誰がどんな勝負で挑んで来ても私は負けんぞ!さぁ来い!!」

「いっくだぞー!!修羅突風撃!!」

凍「陣!本体にはいくら傷を負わせてもいいがコートにはダメージを与えるなよ!」

黄「ぬぉ〜!!なかなか強い風だが・・・!!このコートは絶対手放さんぞー!!」


蔵『陣組頑張れ、黄泉組負けるな。』


鈴駒「小学校の運動会の放送席!?」

陣「ふぇ〜、もうダメだべ〜!」

凍「くっ・・・ここまでか・・・!」

鈴駒「あちゃー、陣と凍矢のドリームタッグでも無理だったか・・・」

鈴木「うむむ・・・こうなったら私と死々若のドリームタッグで!!」

「ナイトメアタッグだろ。」


蔵『旅人は執念深く、風が強くなればなるほど、奪われてたまるか!!とコートを必死に抑えたのです。』

陣「凍矢ごめんな・・・オラの力が至らないばっかりに・・・」

凍「お前のせいじゃないさ、だからそんなに耳をしょんぼりさせるな・・・俺もまだまだ修行不足だ・・・」

陣「あ〜あ・・・凍矢にあったかいコートプレゼントしたかったのに・・・」

凍「俺は平気だ・・・あったかいコートが必要なのはむしろお前の方だろ?」

陣「うんにゃ、オラは大丈夫だべ!凍矢こそ、これ以上冷えたら雪だるまになっちまうべ!」

凍「なるワケ無いだろ・・・でも・・・お前が傍に居てくれたら雪も氷も溶けてしまうな・・・」

「あー!ウォッホン!!オッホン!!今日は何だか意味も無く暑いな!コート脱いじゃおうかな!!」

飛「ふん・・・くだらん。こんな茶番、俺が終止符を打ってやる。」

躯「何だ、飛影、珍しくやる気だな。」


蔵『おーっと!!ここで"眠れる魔界の邪眼師"もとい!"眠ってばっかりの寝過ぎの邪眼師"飛影の登場です!』


飛「ふん・・・俺の黒龍でそんなコートなぞ灰にしてくれる・・・」

黄「だから・・・脱がせる事に意義がだな・・・」

「問答無用!炎殺黒龍波ー!!」

「甘い!私の魔古忌流煉波反衝壁で吸収してくれるわ!」

躯「待て飛影、その黒龍波オレに向けて撃て。」

黄「はっはっは!血迷ったか躯!私に屈服して部下と共に心中の道を歩むか!」

飛「躯・・・どういうつもりだ?」

躯「まぁ、何だ。ここにとある人物の貯金通帳と預金通帳、そして印鑑があってな・・・」

黄「そ、それは・・・!!」

躯「オレなら飛影の黒龍波を跳ね返せるが、この通帳君達は・・・どうかな・・・?きっと炭とか灰になるんじゃないかな?」

黄「貴様いつの間に取った!?」

躯「事前に狐からもらい受けてる。」


蔵『だって最後には脱いでもらわないと話が成立しないでしょ?』


「一行目から崩壊しっぱなしだろうが!!」

躯「さぁ、どうする?オレは別にいいんだぜ?この通帳君達が燃え尽きようと塵になろうとオレの懐に入ろうと・・・」

黄「馬鹿な・・・それには修羅の養育費も入ってるんだぞ・・・!」


蔵『あっ、それはご心配なく。ちゃんとその分は俺の口座に移しておきましたから。』


「勝手に移すな!」

躯「そんな事言い合ってる場合じゃないぜ?ホラ、通帳君達がファイヤーダンスを踊り始めるぜ?」

「分かった!脱ぐから返せ!!」

躯「ったく・・・最初から素直によこせばいいんだ。」

鈴駒「さすがッスね・・・躯の姉貴・・・」

躯「まっ、中古品だが三回クリーニングに出してから売れば夕食代にはなるだろ。何が食いたい?」

陣「オラ焼き肉食べ放題!」

酎「おっ!いいね!!ビールが進むぜ♪」

鈴駒「焼き肉でなくたって進むでしょ。うーん、でもこの時期しゃぶしゃぶも捨てがたいよね〜。」

凍「たまには料亭で懐石料理と言うのも悪くないな・・・」

死「そうだな、俺も風情がある落ち着いた茶寮なんかで食べてみたいな。」

鈴木「私は高級フレンチが良いな!」

飛「もんじゃだもんじゃ。」

躯「じゃあ修羅と浦飯一行達も誘って繰り出すとするか。」

鈴駒「あっ、流石ちゃんも誘っていい?」

酎「じゃあ俺も棗さん呼ぼっかな〜♪」

陣「オラもう腹ペコだべ〜。」

凍「陣、あまりはしゃぐんじゃないぞ?ちゃんと行儀良くするんだぞ。」

「ほーいだべ☆」


*このお話の教訓は、『みんなで美味しい晩ご飯を食べよう☆』と言う事でした*


「そんなワケあるかー!!こんなの全然名作じゃなーい!!」







-Fin-







一回"陣"と打とうとして"ジョン"って入力してしまった殿です。幽白にジョージはいましたがジョンはいましたか?

さてさて。久々の童話シリーズ・・・一回ぽっきりだった童話シリーズ・・・回を重ねるたびに、

全く違うお話になっておりますな!

一応最後には脱いでいただけたので良し!

黄泉様ってば何て哀愁が似合うお方なんでしょう・・・

頑張れ魔界のお父さん!!