躯様の『飛影観察日記』



○月○日(月)天気 暗雲立ちこめる晴れ


今日は珍しく学生が朝起きる様な時間に起きたので、朝のテレビを見ながら

一緒に朝食を摂っていた。そんな折、テレビから

「は〜い、では『癌陀羅の母による』今日の運勢で〜す。」

占いとかそう言った類(たぐい)は別に信じない質(たち)だが、

見るのはタダだ。さらに珍しい事に何と飛影まで起きてきたでは無いか。

相変わらず寝癖みたいな髪がさらに寝癖を成長させた様な頭でオレの部屋に来た。

せっかくなので、

「飛影、お前何座だ?」

「そんな事聞いてどうする。」

「いや、テレビで丁度今日の運勢やってるからさ。」

「くだらん。」

うむ、飛影もやはりそういう類のものは気にしないらしい。

やはりオレ達は結構似た者同士の様だなと、こういう時に思う。

「見た日に限って運勢が悪いからな。」

前言撤回。めちゃめちゃ気にしてやがった。

まぁ、案外可愛いと言えば可愛い。

「そう言えばお前、自分の生まれた日とか分かるのか?」

「知らん。だから最近はその時見た一番運勢のいい星座のあたる日を誕生日にしている。」

一年365日全てを誕生日してるヤツを初めて見た。

「貴様が占いなんか信じる奴だったとはな。」

「別に信じてはないさ。それよりどうだ?せっかく起きたんだ、一緒に朝飯食べようぜ、飛影。

食堂から持って来いよ。」

「ああ。」

最近は一緒に食事を摂る事も多くなった。

あいつには絶対言わないが、これがオレの密かな楽しみだったりする。

バタバタバタバタ・・・!!

「ん?何だ飛影、そんな慌てて・・・」

猛スピードで戻ってきた飛影。何か見たいニュースでもあったのだろうか?

「ちっ・・・今日もトロ見逃してしまった・・・!!今日はジュンだったのに・・・!!」

「・・・・・・」

いつ「めざマシーンをやってみたい」と言いだすか、楽しみと言えば楽しみである。







×月×日(火)天気 すこぶる暗雲


奇跡的な事に今日も早起きした。その前にいつもいつ起きてるかと言うと

テレビでいいとも青年隊が踊る位の時間に目を覚ます。(早い時間の場合)

と言うわけで今日も早起きしたからテレビを見ながら朝食。今日も飛影と

一緒だ。真剣な顔で納豆を混ぜている。ある意味黒龍波撃ってる時より

真剣な顔だ。

「邪眼の力をなめるなよ。」

納豆をかき混ぜるのに果たして邪眼は必要なのだろうか?

ちなみにひきわり派らしい。

オレはどっちかと言うとお茶漬けとかの方が好きだが。

「お前と食事を摂るようになって、朝に納豆食べる事が多くなったな。」

「そうだな。躯、もっと丹念に混ぜろ。それでは混ぜ方が甘い。」

ちなみに納豆の栄養価と混ぜ具合は関係無いのだとか・・・

そのうちナットウキナーゼについて語りだしたりして・・・

でもこのファ○リー納豆に一個だけ付いてくるタレは譲らないからな?







♪月♪日(水) 天気 雨が降りそうだと言った感じだが意外と降らないそんな暗雲


今日は飛影から素朴だが奥深い質問をされた。

「百足は何で動いてるんだ?」

・・・・・そう言われれば何で動いているんだろうか・・・

普通にガソリンとか・・・いや、魔界にガソリンスタンドなんて無いし、

あったらあったで勝手に奪うだろうし・・・

ガソリンだとしたらコイツはハイオクか?それともレギュラー・・・

いや、最先端を誇る百足としては今話題のハイブリッドか?

まさか自分の乗り物が何で動いてるか知らないなんて、元一国の王が言えたモンじゃないしな・・・

今更だが、コイツ何で動いてるんだ・・・?

「で?結局何で動いてるんだ?」

「気合いだ。たまに根性。」

「そうか。」

通じた。こういう所は助かる。

「あと百足内の悪趣味な内装は誰の好みだ?貴様のか?」

・・・今日に限ってやたら答えがたい質問を繰り出してくるな・・・

「躯様、内装の方は如何なさいますか?」

「別にこうしたいと言うのは無いな。いいじゃないか、このままで。」

「はぁ。でもせっかくでございますし、少しこだわってみては。」

「みてはと言われてもな・・・お前はどうしたい?奇淋。」

「はっ。拙者はこう、鹿威し(ししおどし)等を設けて日本庭園の様な落ち着いた感じのが

よろしいかと。」

「和風か・・・悪くは無いが何かイメージと合わないな・・・それに寝てる時までカコーンと言うのはな・・・」

「左様でございますか。ではベルサイユ宮殿の様な瀟洒(しょうしゃ)なシャンデリア等で飾ってみては。」

「そういうゴテゴテしたのはな・・・やっぱりこのままでいいんじゃないか?」

「でしたらこちらのカタログから選んでみては如何でしょう。」

「カタログ?『魔界インテリア○○○○年はコレで決まり!!』・・・」

「そちらから躯様の好きそうな内装のものをお選びになってはどうでしょう。」

「そうだな。じゃあ77が好きだから77ページのにするか。」

「はっ。かしこまりました。」

・・・てなやりとりの結果、こういう内装になったんだよな・・・

「別に・・・気付いたらこういう風になってたんだよ。何事も形に囚われる必要は無い。」

「なるほどな。俺もこういう薄暗いのは寝やすいから嫌いじゃないがな。」

・・・確かに飛影が鹿威しの音聞きながら緑茶すすってる姿なんか似合わないからな・・・

まぁ、結果オーライと言った所か。







¥月$日(木)天気 洗濯物を干すにはかなり不安な暗雲


飛影がオレの所に来て随分経った。

筆頭戦士の座も手に入れた事だし、個人の部屋は与えてある。

だが最近はオレの部屋に居座る事が多くなったし、パトロールに出ている時も多いから

そんなに使ってないのかもしれない。

と言うわけで飛影がパトロールに行ってる間に飛影の部屋を探索してみようと思う。

飛影には内緒だぞ?

まずタンス。

普段は黒ずくめの服ばかり着ている様だが、他のは無いのだろうか?

と言うかしょっちゅう破けてる服はどうしてるんだ?

キツネにでも修繕させてるのか?まぁ、どうでもいいが。

それでは失敬して・・・

・・・少な。

いつも着てる様なシャツにいつもはいてる様なズボンが3着ずつ。

まぁ、いつもオレに挑んで来れば嫌でも服はボロボロになるからな・・・

それはそうとせめてたたんでしまっておけ。飛影。

次は本棚。

あいつが余暇に読書を嗜む(たしなむ)様な奴だとは思わないが、それでも何か読むだろう。

・・・無い。

そりゃそうだ・・・あいつ新聞もコボちゃんしか見ないからな・・・

あっ、一冊だけある。・・・『ミッフィーちゃん』・・・

意外と言うか、猛烈に意外だ。まさに「そう来たか・・・」と言いたくなる心境だった。

ある意味我が部下ながら恐れ入る。

ちなみに。

あまりにも服が無い様だからこっそりオレのシャツを混ぜておいた。

黒いタンクトップだし、あの無法地帯みたいな引き出しに入れてもバレないだろう。

「よう、遅かったな。どうした?服がボロボロだぞ?」

「パトロール自体は早く片づいてな。幽助と手合わせして来た。」

「ふーん・・・とにかく着替えてこい。風邪引くぞ。」

「ふん・・・この程度で引くものか・・・」

そんな憎まれ口を叩きながら着替えに行った飛影が戻ってきたらさっきオレが入れておいたシャツを

着ていた。

サイズは悲しいまでに問題なさそうだ。

「このシャツいつものより着心地がいいな。買った覚えは無いが・・・」

「そうか・・・他の奴の洗濯物が紛れ込んだんじゃないのか?」

「かもな。まぁいい。そうだ。お前もこれ読むか?」

「は?」

「蔵馬が持ってきてな。人間界では有名な本らしい。」

「・・・・・お前、遊ばれやすいな・・・」

「は?」

せめて・・・ピーターラビットにしといてやれよ・・・キツネ・・・いやごんぎつねか?






÷月±日(金) 天気 エビフライの形をした暗雲


螢子から『人間界では今日はバレンタインデーと言って、好きな男にチョコを贈る日なんだ』と教えられた。

日本独自の行事らしいが、人間界の女は大多数の女がチョコをあげるとか。

そんなわけだから。

「飛影。チョコ欲しいか?」

「チョコだと?何故急にチョコなんだ?」

「今日は女が男にチョコをあげる日なんだそうだ。螢子が言っていた。」

あえて説明から『好きな』と言う単語を取り除いてみた。

「きっ、貴様!またくだらん人間界の知恵を吹き込まれやがって!ここは魔界だ!」

ふーん・・・動揺すると言う事はこの行事についての知識があるって事だな。キツネにでも教えられたか?

「別にチョコやるのに人間界も魔界も無いだろ?要は欲しいのかいらないのかが知りたいんだよ。」

「・・・べ、別にチョコなどいらん!!虫歯になるだけだ!!」

それはしっかり歯磨きをすればいいと思うが・・・

「そうか、いらないか。」

「当たり前だ。そんな下らない事考えてる暇があるなら俺と手合わせをしろ。」

「分かった。じゃあ他の奴らにチョコ配って来るからその後でな。」

「待て!他の奴にやるのは禁止だ!!」

「何故だ?お前はいらないのだろう?」

「お、俺はチョコなどいらんが他の奴にやるのは許さん!!」

「せっかく買ったんだ。やらなくては無駄になる。」

「・・・・・だったら自分で食えばいいだろ。」

「でもなー、コレはあげる用に買ったものだからな・・・」

「ちっ!分かったから半分よこせ!仕方ないから食ってやる!」

「いいって。そんなに無理しなくても。オレからのチョコなんて欲しくないんだろ?」

「うるさい!いいからさっさとよこせ!溶けるだろうが!!」

ふふ・・・耳まで真っ赤になって・・・

そういう所も好きだぜ?飛影。

でもやっぱり顔が赤いのは

「ごほっ!?なんはほのひょほ!?」

唐辛子入りのチョコだからか?






▽月△日(土) 天気


浦飯が万馬券を取ったと言うのでメシをおごってもらう事になった。

リクエストしてもいいと言われたので焼き肉を所望した。

浦飯夫妻と飛影とで久々の焼き肉。

「飛影、万馬券取ったっつっても加減して食えよ?前回の焼き肉の請求の時黄泉泣いてたぜ?」

「ふん。何の事だ。今日はお前がおごらせて欲しいと言うから来てやったんだぞ?」

「誰がおごらせて欲しいなんて言ったよ!?自分上位に解釈すんな!!」

「いいじゃないの幽助。どうせまたその万馬券のお金で競馬して無駄になっちゃうくらいならこうして

みんなでおいしくご飯食べた方がいいじゃない。」

「おめーこそ、そんな食っていいのかよ?今にぷくーっと肉がついて・・・」

「何ですってー!?」

「おいおい、鉄板に浦飯の顔面突っ込むなって。肉が食えなくなる。」

「あらごめんないさい躯さん!すみませーん、新しい鉄板お願いしまーす!」

「躯・・・冷静にカルビ食うな・・・」

「全く、デリカシーが無いんだから・・・」

「けっ、俺はお前の体型を心配して言ってやってんだよ。」

「そうか?螢子はもう少し食ってもいいと思うがな。そうしたらオレが螢子の事おいしく戴こうかな?」

「え?(///)」

「だめだめ〜。躯にはこの飛影ちゃんがいるでしょうに。」

「飛影の肉は固くてまずいからな。」

「貴様いつ俺の肉を喰った!?」

「いや、見た目からまずいだろうなーって。」

「だったら俺の要求通り手合わせするんだな!そうしたら俺の肉もほぐれるだろうにな!!」

貴様こそもっと食って肉付けて食べがいのある肉にするんだな!!」

「やっだ〜vv飛影ちゃんたら躯の事食べたいって〜vv」

「そう簡単には食わせてやらんがな。」

「幽助!あんたまたそんな躯さんと飛影君に失礼な事を!!」

「炎殺黒龍波ー!!」

「ぶわっ!!だから螢子!鉄板に顔押しつけるな!飛影!店の中で黒龍波撃つな!!」

「あっ。レバー焼けた。」




久し振りに焼き肉も食えたし、浦飯夫妻の漫才も見られたので満足満足。

黄泉に請求書送れないのは非常に心残りだが。






†月†日(日) 天気 『暗雲立ちこめる』と言われそうな暗雲


たまには飛影のお願いも聞いてやろうと言う事で手合わせをしてやる事にした。

何度目にかなる手合わせ。確実に腕を上げている。まだまだオレには敵わないがな。

オレだってそう簡単に追い抜かれてやるわけにはいかない。

「炎殺黒龍波ー!!」

いつも切り札とばかりに最後に繰り出してくる黒龍波。

残念ながらその威力はまだオレに決定打を浴びせられる程では無い。

黒龍波を止められたら事実上勝負は付いた事になる。

「飛影、また腕を上げたな。」

「ふん・・・世辞はいい・・・どうせ貴様にとっては一ミリの変化も無いものだろ。」

「そう言うなよ。お前には炎殺拳だけじゃない、もっと強力な武器があるし、オレの弱点を突けば、

オレに勝つ事だって不可能じゃないさ。」

「弱点・・・だと・・・?」

「そう、オレの弱点・・・知りたいか?教えてやってもいいが、そう簡単には教えられないぜ?」

「ふん・・・貴様の・・・じゃく・・・てん・・・など・・・どう・・・でも・・・」




冬眠に入ったか・・・




お前だけが持つ最強の武器 オレにとっては最大にして最強の弱点

お前のその寝顔がな・・・

お前のその寝顔をもっと見ていたいから

ずっとオレを追いかけてて欲しいから。

何度でも黒龍波を跳ね返してやる。

オレはお前には負けない。

だがお前はオレ以外には負けるなよ?

いいな?飛影。







見ていて飽きないと言うより目が離せないと言った感じのする男である事は確かな様だ。

以上 報告 躯








と言うわけで、『猿の末裔二周年企画小説』第一弾は日記と言う事でしたー!!

小説ネタは二位までと言う事にしていたのですが、三つのネタが同点一位になったと言う事で、

まずは日記編と言う事で。ネタは三つになったのですが、コレが綺麗さっぱり分かれまして、

この新たな展開の日記編が一つ、童話シリーズから一つ、ノーマル系から一つと言う具合に

なりました。

日記編第一弾は躯様と言う事で。その前にコレが日記か?と言う突っ込みをされそうですが、

私自身日記を書き残しておくタイプでは無いのでみんな日記にどんな事書いてるかも知りませんですたい。

ネタご意見に『華麗な』と言うフレーズがありましたが、一体どこが華麗に書かれていたのか・・・