『飛影が風邪をひきました』





チュンチュン・・・(魔界のスズメの鳴き声)



躯「おい、飛影朝だぞ。上司に起こさせるとはオレもいい部下を持ったモンだな。」

飛「・・・・・・」

躯(ん?おかしいな。いつもなら皮肉に皮肉で返してくる飛影なのに・・・)

「飛影?おい?夢の住人になる気か?」

飛「・・・む・・・むく・・・ろ・・・」

躯「飛影・・・お前・・・!!」












幽「飛影・・・」






蔵「どうしてあなたが・・・」






躯「風邪を引くんだ?」






飛「俺が風邪をひいてはいかんのか・・・?へっくし!!

蔵「いけないワケじゃないけど不自然と言うか不気味です。」

幽「前代未聞って感じ?」

躯「お前に風邪をひかせるウィルスがいたとはな・・・百足内に緊急発令出した方がいいかもしれんな・・・」

幽「確かに飛影がひくなんざ並の風邪菌じゃねぇな。」

蔵「黄泉と躯が国家解散する前にこのウィルスがいたら第三勢力になってたかもですね。」

幽「おーい、飛影の中の風邪ー、次の魔界統一トーナメント出てみねぇ?」

蔵「それともウチの軍事参謀になりませんかー?」

飛「人の風邪に変な語りかけをするな・・・」

蔵「まぁ、冗談はこの位にして。」

飛「お前の冗談は長くてくどい・・・」

幽「たまに冗談じゃない時もあるからな。」

躯「で?どうなんだ?コイツの容態は。」

蔵「鼻水、せき、くしゃみ、のどの痛み、頭痛、悪寒、だるい、体の節々が痛い、完璧な風邪の症状です。」

幽「飛影、風邪コンプリートだな!!」

飛「嬉しくない・・・」

躯「で?どうなんだ?コイツの風邪の度合いは。人並みか?」

蔵「飛影の場合は重症目の風邪って感じですが、並の妖怪なら瀕死の風邪ってトコですね。」

飛「躯・・・何故コイツらを呼んだ・・・」

躯「時雨があいにく外出中でな。オレだってよもやお前が風邪をひくとは思わないしな。

ここにお前に効きそうな薬は無いし。」

蔵「俺も治療系の薬草は何種類かありますが、飛影クラスのになるとちょっと調達が難しいですね・・・」

飛「ふん・・・薬などいらん・・・こんな風邪、寝てれば勝手に治る・・・」

蔵「ダメですよ、飛影。風邪を甘く見ちゃ。」

幽「あっ。そうだ。飛影、風邪は人にうつせば治るって言うぜ?だから躯にキスしてもらえば・・・」

「邪王炎殺煉獄焦ーーー!!

「ぎゃああああ!!」

躯「何だ飛影、結構活きがいいじゃないか。」

蔵「そういう言い方すると飛影、魚みたいですね。」

躯「煮ても焼いても刺身にしても食えなさそうだがな。」

蔵「じゃあ俺薬草探して薬作りますのでそれまで何とか看病しててください。貴方一人じゃ大変だろうから

応援部隊要請しておきますね。幽助は病人食の調達。」

幽「その前に俺病院行かなきゃいけないっぽい重傷なんですけど・・・」

躯「応援部隊?」









「飛影風邪ひいただべか!?」

鈴木「ああ!!飛影!何て実験のしがい・・・痛々しい姿になってしまったんだ!!」

躯「狐の言っていた応援部隊はお前らか?」

陣「大丈夫!オラ達凍矢が風邪ひいた時に看病した実績があるべ!蔵馬が薬持ってくるまでオラ達に

任せるだ!!」

凍「安心しろ飛影。俺はコイツらのごうも・・・看病でもちゃんとこうして生きているぞ。」

鈴木「そうだ飛影!私が作ったこの『風邪がとっとと治るンです』を飲むか?

一瞬にして風邪の症状なんかおさらばだぞ?」

鈴駒「もれなくこの世ともおさらばだけどね。」

酎「いーや、風邪をひいた時は日本酒一気に限るってモンよ。」

飛「俺を殺す気か・・・?」

鈴駒「でも飛影が風邪なんてね。百足内で風邪でも流行ってるの?」

躯「そういう話は聞いてないがな。」

死「何か変な物でも食べたとか・・・」

陣「お腹を出して寝てたとか?」

凍「それはお前だ。何度言えば治るんだ?毎夜毎夜布団をかけ直す俺の身にもなってくれ。」

躯「そうなんだよな。オレも苦労してるよ。」

飛「躯・・・余計な奴に余計な事を言うな・・・」

陣「そうだ!飛影、オラ達の作ったお粥食べるだか?栄養満点特製六人衆粥vv」

飛「毒性の間違いだろう・・・」

陣「だってアレ食ったら凍矢一日で治っただよ?効果はバッチリ絶大だべ!!」

凍(治らないであの粥を毎食出されてたら絶命してただろうからな・・・)

死(常人なら一口でこの世とおさらばだ。)

飛「そんな得体の知れない物が食えるか・・・」

鈴駒「否定出来ないのが悲しいけど、何か食べて栄養付けなくちゃ。」

酎「見た所朝から何も食ってねーんだろ?やっぱここはウオッカの一気のみ・・・」

飛「ンな事出来るか・・・」

鈴駒「じゃあ無難に卵酒とかいっとく?」

飛「頼むからほっといてくれ・・・一人にしてくれ・・・」

死「寂しく聞こえるがそれがお前の一番助かりそうな手段だと言うのもまた寂しいな。」

凍「飛影、コレでも俺達お前が心配で来たんだぞ?何か出来る事は無いか?」

飛「心配してくれるなら来ないでくれ・・・」

陣「分かった!オラが飛影の風邪ぶっ飛ばしてやるべ!」

飛「俺ごと吹っ飛ぶだろうが・・・」

鈴木「ならば凍矢に凍り付けにしてもらって熱を下げると言うのはどうだ?」

躯「体温がマイナスになられるのはちょっとな・・・」

飛「ちょっとなじゃないだろちょっとなじゃ・・・」

鈴木「全く素直じゃないなお前は。私達がこんなに心配していると言うのに。」

飛「そう思うなら出ていけ・・・このまま突っ込みさせられてたら治るモノも治らん・・・

鈴駒「それもそうね。」

躯「飛影、食欲あるか?」

飛「微妙だ・・・ゴホッゴホッ・・・」

鈴駒「そうだ、螢子ちゃんにお粥作ってもらったら?螢子ちゃん料理上手だし。」

鈴木「いや、お粥ならやはり私等が作った方が・・・」

死「よせ。飛影が死ぬだけだ。」

躯「じゃあ螢子に頼んで来るか。悪いがお前等オレが帰ってくるまで飛影の看病しててくれ。」

陣「おうっ!!しっかり看病してるだ!!」

飛「お前・・・俺を綺麗さっぱり見殺しにする気か?こんな応援しに来たんだかとどめ刺しに来たのか

分からない連中を置いていくな・・・幽助に行かせただろうに・・・」

躯「心配するな。変態科学者も酔っ払いもいて不安だろうが、陣と凍矢がいれば何とか無事でいられるだろう。」

死「鈴木が変な事をしたら俺に任せろ。」

躯「じゃあ飛影行って来るからな。」

飛「次に会うのはあの世かもな・・・」









螢「え?飛影君が風邪?」

幽「そっ。世の中何があるか分からねぇよな。あの飛影が風邪ひくんだからよ。」

螢「あんただって風邪ひける体だったんだから飛影君だってひいてもおかしくないでしょ。」

幽「へいへい。」

躯「悪いな、螢子。こんな事頼んでしまって。」

螢「全然、気にしないで。人間界のお粥で良ければ。

でも・・・飛影君、大変だったよね。今までずっと一人だったんでしょ?」

幽「ん?まぁ、そうだろうな。あいつが誰かといるなんて滅多にてか、まずありえねぇだろ。」

螢「具合悪い時も、自分で何とかしてたんだろうね・・・」

幽「そうだな・・・でもいいんじゃね?今は躯のフカフカベッドで快適に風邪ひいてるワケだし。」

螢「快適に風邪ってどんな日本語よ。」

躯「・・・・・・・」

螢「躯さん?どうしたの?」

躯「ん?いや、昨日まで飛影が風邪ひくような事は無かったから、何が原因だったのかなと思ってな。」

幽「確かに簡単に風邪ひくようなタマじゃねぇからな。飛影。」

躯「飛影・・・まさか何か重病なんじゃ・・・」

幽「まっさかー。飛影に限ってそんな事ねーって。」

螢「蔵馬君だって風邪だって言ったんでしょう?」

躯「それはそうだが・・・あいつ医者じゃないだろ?」

幽「『出来れば医者になって欲しくない人物BEST3』だけど蔵馬がそう言うんだったらそうなんだろ?」

躯「・・・・・・」

螢「もう、躯さんらしく無いな。躯さんがそんな顔してちゃ飛影君治るモノも治らないわよ?」

躯「そんな顔って・・・」

幽「『飛影の事が心配で心配でたまりませーん!!』って顔してるぜ?」

躯「オレは・・・別に・・・」

螢「そうだ!躯さんお粥作ってみない?」

躯「えっ・・・いや、オレは料理は・・・」

螢「大丈夫、あたしが教えるから♪飛影君だって躯さんが作った方が喜ぶわよvv」

躯「自分で言うのも悲しいがオレの料理は酷いぜ?一度百足の乗組員を絶滅の危機に追いやった事もある。」

螢「・・・き、きっと食材が腐ってたのよ!躯さんのせいじゃないわ!」

躯「いいんだ。お前が作ってくれ。オレも食いたいし。」

幽「でも躯さ、使い魔とかで俺に粥追加ーって言えばよかったんじゃねぇの?わざわざ来てさ。」

躯「ん?ああ、一応コレでも飛影には気を遣ってやってるんだぜ?」

螢「気?」

躯「あいつはあいつが弱ってる所なんて、オレに見せたがらないだろ?

お前等の前では知らんがオレの前では背伸びをしたがる。だから見て見ぬフリさ。」

幽「ふーん・・・そんなモンか?」

躯「そんなもんだ。」






オレだって・・・

あいつが風邪ひいた位で動揺してるオレなんて見られたくないからな・・・









凍「飛影!風邪のひきはじめには葛根湯(かっこんとう)だ!!」

鈴駒「でもコレ相当重症なタイプでしょ?」

凍「ならば小柴胡湯(しょうさいことう)だ!!のどの痛みにはキンカンの煎じ汁だ!!」

酎「そういやどっかでケツにネギはさめば治るって聞いたな。」

陣「飛影!ケツ出すだ!ネギはさむだ!」

飛「出すか!はさむか!!」

鈴木「飛影!男同士何も恥ずかしがる事等何も無い!ほら!こうやって死々若も一緒に尻を出すから!!」

斬!!!!!

死「病人の目の前で人の袴(はかま)を下ろすな・・・」

凍「と言うか誰の前でやっても犯罪じゃないのか?」

鈴木「くっ・・・いくら私の美尻だってこんな大勢の前で晒すのは恥ずかしい・・・」

「みんな恥ずかしいからズボンだの何だのはいてるんでだろうが!!」

鈴駒「アレ?ネギって首に巻くんじゃなかったっけ?」

鈴木「いや、口にくわえてフラメンコ調にオ・レ!とやるのかもしれん。」

飛「貴様ら・・・どうでもいいからネギと俺から離れろ・・・いや消えろ。」

陣「そうはいかねーべ!躯達が帰ってくるまではほっとけないべ!」

飛「本人がほっといてくれと言ってるだろうが・・・」

躯「ただいまーっと。飛影、無事か?」

飛「やっと帰って来たか・・・お前等、とっとと帰れ・・・」

躯「何だかさっきより悪化してそうだな。」

鈴木「そうなのだ!我々の手厚い看病でも飛影を癒す事は出来なかった・・・!!」

鈴駒「じゃあ飛影がまだ無事な間に帰ろうか。飛影、安静にね〜。」

鈴木「飛影!辛くなったらいつでも呼べ!ちょっと遅くなるが駆けつける!!」

死「俺はお前がいると辛い。」

陣「飛影!風邪ぐらいでくじけちゃダメだべ!明日は明日の風が吹くだ!」

酎「飛影、二日酔いには事前に油っこいモノや柿を食うといいって言うぜぃ。」

飛「俺は二日酔いじゃない・・・」

凍「飛影、風邪の予防にはうがい・手洗いだ!」

躯「ひいた後に言っても意味が無いんじゃ・・・」

飛「何でもいいからさっさと帰れー!!」

「ぎゃあああ!飛影がぷっちんだべ!!」

躯「何だ元気そうじゃないか。あっ、そうそうプッチンプリンも買ってきてやったぞ?」

陣「あっ、オラも食いたいv」

凍「いいから逃げるぞ陣!」

陣「ぷっち〜ん・・・・・・」

飛「はぁはぁはぁ・・・」

躯「飛影、あんまり無茶するなよ。体に響くぜ?」

飛「させ・・・てる・・・のは・・・どっち・・・だ・・・」

パタン

躯「言わんこっちゃない。」

幽「飛影もこんな時くらい甘えればいいのにな。」

蔵「おや?じゃあ幽助は螢子ちゃんに素直に甘えられるんですか?」

幽「うっ・・・」

躯「ふっ、それじゃあ飛影の看病もとい観察と行こうか。コイツの寝てる時は星の観察とかよりはるかに面白い。」

幽「じゃあ買ってきたアイス食いながら観察としゃれ込もうぜ♪俺ガリガリ君な。」

蔵「じゃあ俺ハーゲンダッツの下さい。」

躯「じゃあ俺はPINOだな。井村屋たい焼きアイスは飛影にとっておこう。」

蔵「にしてもどういうコンセプトでこのアイス買ったんですか?」

幽「結構迷ったんだぜ?飛影って面白いとか懐かしい系で攻めそうだし。だからダブルソーダとかスイカバーとかも

いいかなーって思ったんだけどな。」

蔵「ああ、そう言えばそうですね。あんまり似合わなそうだけどアイスの実とか。」

躯「雪菜は雪見大福とか好きそうだな。」

幽「あ、似合う似合う。」

躯「そうだ、アイスと言えばこの前飛影が・・・」











飛影・・・

こんな時位は甘えてくれても、頼ってくれても構わないんだぜ?

オレでいいんならな・・・











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