『マッチ売りの年末商戦』





蔵「えー、久々に行われる童話シリーズ、今回で何と多分7個か8個目です。」

鈴駒「いきなり曖昧なのね。」

蔵「一回ぽっきりだったはずのこのシリーズ、皆様の熱い支持と黄泉からの善意の資金提供により

ここまで来る事が出来ました。」

躯「黄泉もなかなかいいスポンサーになったな。」

蔵「皆さん、いつも疑問に思いませんでしたか?いつもいきなりぶっつけ本番みたいにやっていて

練習はしてないのか、俺がどうやって脚色を付けているのか等、いろいろ疑問に思われる事があると思います。

そこで!今回はいつも一味違うと言うのはちょっと意味合いが異なると思われますが、この童話シリーズが

出来るまでの行程を、今日はお送りしたいと思います。企画から撮影、配役決めから劇の練習、そんな言わば

舞台の裏を、皆様にご覧いただきたいと思います。」

幽「えっ?企画とかって全部蔵馬が独断専行で仕切ってたんじゃねぇの?」

蔵「やだなー、何を言ってるんですか幽助ってばvv」

グサ

幽「痛ぇ!!ちくちく痛ぇ!!」

蔵「では企画会議の様子からどうぞvv」





童話シリーズの作り方その@ 企画会議




蔵「さーて、今回もこの時期が来ましたね。童話シリーズ新作発表の時が。」

陣「へっ?コレって定期的にやるモンだっただか?」

凍「陣、今は企画会議中だ。私語は慎め。」

鈴木「はっはっは!私による素敵な劇にするために就寝時間ギリギリまでギンギンバリバリに話し合おうでは無いか!!」

死「死語も慎め。あと行動と露出もな。」

蔵「コホン。えー、まずは何をやるかを決めないといけませんね。何か意見はありませんか?」

陣「はいはーい!オラ一休さんやってみたいだ!」

蔵「いいですねー、黄泉の頭丸刈りにしてねvv」

鈴駒「うわー、リアルだね。」

「絶対させんからな!!」

凍「なら西遊記と言うのはどうだ?」

蔵「おっ、童話シリーズ初めての中国物と言うのも面白いですね。黄泉をツルピカにして三蔵法師役でvv」

「人の頭を伐採するな!!」

躯「別にお前の頭がはげても地球には何の影響も無い。」

蔵「他に無かったかな?つるつるさんが出るお話って。」

黄「検索するな!」

躯「ごちゃごちゃうるさい。男なら黙ってはげろ。」

「無茶苦茶言うな!!

鈴木「ええい!!黄泉がはげようと脱毛しようと構わないがもっと私が美しく華麗に演じられる題材を出したまえ!!」

死「そんな童話も御伽話も存在せん。」

鈴木「いーや!ベルバラとか源氏物語とかいろいろあるではないか!!」

鈴駒「『鈴木』って言う日本を代表する名前の持ち主がフェルゼンかい?」

鈴木「私がアンドレをやるから死々若、お前はオスカルだ!陣がフェルゼンで凍矢がアントワネット!

黄泉がジェローデルで躯がベルナールで螢子君がロザリーだ!!さぁ、早速ドレスの注文だ!!」

死・凍「絶対着ないからな!!」

鈴木「絶対着せてみせる!!」

鈴駒「訛ってる(なまってる)フェルゼンって言うのもどうよ?」

蔵「それもおもしろいんですけど、うーん今回の予算でベルサイユ宮殿借りられるからな?」

黄「そんな金もう残ってないわ!!」

鈴木「ええい!!ごちゃごちゃと反論しおってからに!文句があったらいつでもベルサイユにいらっしゃい!!」

凍(もし本当にベルバラだったらポリニャック伯夫人は蔵馬だろうな・・・)

蔵「凍矢?意見があったら遠慮なく言ってくださいね?」←笑顔

凍「いや・・何でも・・・」

陣「うーん、凍矢と死々若はドレスより着物の方が似合うと思うんだけどな・・・」

凍「陣、余計な事を言うな。」

蔵「とまぁ、いろいろ皆さんの意見を聞きましたけど、実はアンケートでもう何やるか決まってるんですよね。」

飛「だったら何でわざわざ会議を開く必要があったんだ?」

蔵「俺民主主義派だから。」

黄「・・・・・」

陣「んで?結局何やるだ?」

蔵「はい、今回はマッチ売りの少女でーす!」

鈴駒「ああ・・・また一つの世界名作劇場が世界迷惑劇場に・・・」

幽「主宰が蔵馬だからな・・・」

蔵「うーん、配役はどうしようかな・・・この作品登場人物マッチ売りの少女以外ほとんどいないし・・・

配役が決まらないと話のイメージが湧かないしな・・・」

凍「少女なら本物の少女を連れてくればいいだろ。浦飯の幼馴染みとか。」

幽「あー、あいつはダメだ。マッチ買わなきゃビンタするからよ。」

螢「しないわよ馬鹿!!」

バシン!

蔵「・・・・・螢子ちゃんはもっと元気のある女の子の役が似合うからちょっと今回は出演無しと言う事で。」

鈴駒「じゃああの氷女の子は?雰囲気もそれっぽいし。」

蔵「何かマッチ持った瞬間にマッチが凍りそうな気がしますね。」

酎「じゃああの霊界案内人の嬢ちゃんはどうでぃ?」

幽「あいつがやると『ちょっと、そこ行く社長、この徳用マッチ買っておくれないかい?』とか言って

胡散臭いダフ屋みたいになるからよ。」

陣「うーん、じゃあ躯がやるってのは?」

蔵「うーん、マッチを買ってあげたくなると言うよりマッチを買わないとどんな目に遭わせられるか分からないって

感じですね。コンセプトはマッチを買ってもらえない哀愁や寂しさを表現すると言う事なので。」

飛「あいつに『買え』と言われて断れる奴はいまい・・・」

酎「じゃあ今回も死々若か?」

死「何故そうなる。」

陣「オラは似合うと思うけどな。」

凍「今回の登場キャラクターはマッチ売りの少女だけだからとりあえず何人かに演じさせてみるのはどうだ?」

蔵「そうですね。じゃあ一通り皆さんにやってもらおうかな。」

凍・死(絶対女装はしない!)



童話シリーズの作り方そのA オーディション

被験者@ 陣

鈴木「よし!陣、準備はいいか!?」

陣「いつでもOKだべ!!」

鈴木「では行くぞ!シーン@、TAKE OFF!!

「いっくだぞー!!」←陣、明後日の方向へフライト

凍「カーット!!陣!!どこに行く気だ!!」

陣「へっ?だってテイクオフって言うから・・・」

鈴駒「鈴木、テイクスタートとか、アクションとか言いなよ。」

鈴木「むっ!私は飛び上がる程情熱的に演技をして欲しいと言う想いから言ったのだぞ?」

鈴駒「ここまだ情熱使うトコじゃないって。」

陣「ありゃ、オラ間違えちまったべか?」

凍「陣・・・英語ほとんど知らないのに・・・」

蔵「う〜ん、陣の持ち前の明るさでマッチを売り、買ってもらえなくてもその健気さでマッチをひたすら

売り込む姿勢を表現しようと思ったのですが、明るすぎて失敗ですね。」

死「いつも適当に好き勝手にやってるだけだと皆思っていたのに結構深く見ていたんだな。」

蔵「当然ですよ。俺はみんなの性格や特性でもって配役を決めているんですよ?ちゃんと考えてるんですから。

黄泉だけは俺のしたいようにしてるんですけどね。」

黄(えっ?)



被験者A 酎

鈴駒「・・・・・本気?・・・正気・・・?」

蔵「本気だし、正気ですよ。」

幽「何でまた少女と言う単語から一番距離的にも次元的に離れた奴を?」

蔵「あえて『少女らしく』と言う殻をぶち破ってみようと思って。」

凍「その殻は破っちゃいかんだろう・・・」

蔵「まぁ正直に言うとこの際見た目は無視して演技力優先で行こうと。」

飛「確かにあいつは今まで特に重要な役をして来てないからな。演技力と言う点ではまだ未知数だろう。」

死「ある意味羨ましいがな。」

陣「んだば行くだぞー?シーンA、アクション!」

酎「マッチョー、マッチョはいらんかねー?」

鈴駒「いらんわマッチョ!!」

蔵「うん、お約束のダジャレでしたね。」

酎「マッチ、マッチ、マッチは如何ですかー?そこ行く紳士なおめぇ、マッチ買えや。」

鈴駒「うわー、いきなり押し売り?」

酎「よく言うだろ、引いてダメなら押してみろってな。」

鈴駒「アンタまず引いてないし、押してるって言うより押しつけてるよ?」

酎「うっせーなー、こまけぇ事はどうでもいいからマッチ買いな。買うといい事あるぜぃ?」

鈴駒「いい事って?」

酎「俺からマッチを買う事によって俺という少女を一人救えるんだぜ?素晴らしいじゃねぇか。」

鈴駒「こんな筋肉隆々(りゅうりゅう)した少女がいるか!!」

酎「仕方ないだろ、マッチ売りと言う過酷な仕事してっと嫌でも筋肉が付くのよ。」

鈴駒「マッチ持つだけでこんな筋肉付くか!どんだけヘビー級のマッチ売ってんだアンタは!!」

蔵「うーん、やればやるほど少女と言うモノから光の速さで遠ざかって行きますね。」

幽「つーかやる前から分かってただろ?」

蔵「それでもやってみたくなっちゃのが人情なんですよねー。」

飛「そんな人情聞いた事無いぞ・・・」



被験者B 死々若丸

死「何でまた俺が・・・」

蔵「だって美男で絵になるし、無難ですから。」

死「だったら貴様がやれと言うにと毎度言ってるだろ・・・」

蔵「だから俺は恥ずかしがり屋なんですってば。」

幽・鈴駒(それが嘘なんだってば!!)

蔵「さぁ、覚悟が決まったら死々若行ってみましょう!アクション!!」

死「・・・マッチ、マッチはいりませんか・・・ご家庭に一箱は必需品ですよ・・・」

蔵「こらこら、そんなやる気の無い売り込みじゃマッチは買ってもらえませんよ?」

凍「そういう話なんだがな・・・」

死「・・・マッチ、マッチ、マッチ一本火事の元、戸締まり用心鈴木用心。

そこの男、このマッチを買ってくれないか?と言うか買え。」

鈴木「むっ!何と私好みの顔と実験のしがいのあるボディ!!よかろう!そのマッチ、君ごと頂こう!」

死「・・・お買い上げありがとうございます・・・特典として俺からの

斬!!

を差し上げます。」

鈴木「ああ・・・愛の炎が燃え上がる・・・vv」

蔵「カット!ダメですよ、死々若。純粋なマッチ売りの少女がそんなバイオレンスな事しちゃ。」

死「教育的指導だ。」

蔵「困りましたね、主役の座に最も近い死々若でも、今回の題材に刀を振り回されちゃせっかくの

少女姿が台無しです。」

死「台無しで結構。誰か他の奴がやってくれればそれでいい。」

鈴木「無責任だぞ死々若!ちゃんと情熱とやる気を持って臨まんか!!」

死「お前が常識と誠意を持ってくれればな。」

酎「んで、結局どうするんでぃ?主役はよ。」

蔵「んー、なら次は凍矢にやってもらおうかな・・・」(チラ)

凍「何だその目は・・・」

蔵「雪降る寒い夜に小さな肩を振るわせて、マッチを売るため街を彷徨い(さまよい)、

寒くて寒くて仕方ないのでマッチの小さな炎に身を委ねる・・・ってなシチュエーションが似合う

と言えば・・・」

幽「言えば?」

蔵「この中だったら凍矢でしょーvv死々若は少女と言うよりは大人の感じがしますからvv」

鈴駒「そう言われると納得せざるを得ないよね。」

凍「鈴駒・・・この中で少女と言う年齢に一番近いのはお前だろ・・・?」

鈴駒「えっ・・・いや、オイラはホラ、裏方とツッコミ専門だから!」

蔵「陣だって凍矢が主役やるトコ見たいですよねーvv」

陣「んだな、オラ凍矢の主役見てぇだなvv」

凍「陣・・・」

躯「さっ、コレで決まったな。誰も文句は無いな?」」

凍「俺が一番文句があるんだが・・・」

飛「文句のある奴は殺す。」

凍「・・・・・・・」





童話シリーズの作り方そのB 舞台練習

蔵「さぁ、凍矢、俺の創作意欲をかき立てる様な素晴らしい演技をお願いしますよ!」

凍「普通話を考えてから練習をするものなんじゃないのか・・・?」

蔵「いえ、実際に一通り正式の劇をやってみて、そこからアレンジを生み出すんですから。」

死「生み出さんでいいものを・・・」

飛「無駄だ。蔵馬に意見など通用せん。」

幽「よく知ってるな飛影。」

飛「いつだってそうだったからな・・・」

黄「私の時からそうだったがな・・・」

躯「生まれつきなんだろ。と言うか黄泉いたのか。しばらくセリフが無かったから消えたかと思ったぜ。」

黄「お互い様だろうが!」

蔵「はいはい、私語は慎んでくださいね〜。では凍矢、演技スタート!」

凍「マ、マッチ、マッチはい、いかがですか・・・」

陣「凍矢ー、恥ずかしがっちゃダメだべー。」

凍「こんなカッコさせられて恥ずかしくない男はそうはいないと思うが・・・」

陣「凍矢大丈夫だべ!可愛いだよー!」

凍「そういう問題じゃない!」

鈴木「うむ。難を言えばもう少し足とか腕の露出があった方が客は喜ぶと・・・」

斬!!

死「お前は引っ込めと何万回言ったら理解するんだ。」

躯「おい、せっかく作った舞台セットに血付けるなよ。」

幽「血の付いた雪がイチゴかき氷に見える・・・」

酎「そういやこのセットの雪って何で出来てるんだ?」

鈴駒「見た目も触り心地も雪そのものじゃない?」

蔵「ああ、それ凍矢の氷ですよ。実際の物を使った方がリアリティあるでしょ?」

陣「あれ?凍矢って雪も作れるだか?」

鈴駒「まぁ、氷を操れるなら雪も作れるんじゃないの?」

躯「ああ、これは凍矢が出した呪氷を黄泉がかき氷機で雪状にしてるんだ。」

黄「はぁ・・・はぁ・・・一体どれだけ作れば気が済むんだ・・・」

陣「じゃあこの雪食べていいだな?オライチゴミルクにして食うだvv」

黄「こら!せっかく作った雪を食べるな!!」

躯「いいだろ、少しくらい食ったって。」

飛「全くだ。相変わらず懐の狭い男だ。」

黄「お前等も氷レモンと氷メロンにして食べるな!」

陣「シャリシャリしててうまいだ〜vv」

幽「何だよ、お前等ばっかり食うなよ。俺にも食わせろってv」

酎「じゃあ俺抹茶な。」

死「宇治金時。」

黄「セットを食べるなセットを!」

蔵「そうですよ、皆さん。凍矢が一生懸命やってる時に食べてる場合じゃないでしょ?

俺にブルーハワイで続けますよー。」

黄「お前まで食うな!もう嫌だぞ私は!!」

蔵「7月25日はかき氷の日だそうです。」

黄「それがどうした・・・!!」

凍(今のうちに逃げられないだろうか・・・)

蔵「さっ、凍矢続けますよvv」

凍(続くのか・・・)

陣「凍矢頑張るだー!」

凍「陣・・・舌が赤いぞ・・・」

死「凍矢・・・マッチ売りの少女より哀愁が出てるな・・・」

凍「マッチ、マッチはいかがですか・・・ケーキのろうそく代わりにマッチを立てるも良し、

麻雀の点数棒にするも良し、花占いの代わりにするも良し、ドミノ倒しに使うも良し・・・」

躯「後半はマッチとしての役目をちっとも果たさないものだな。」

陣「凍矢がどんどんやさぐれていくべ・・・」

幽「こげぱんみたいだな・・・」

凍「どうせどうせ・・・俺は背が低いさ・・・だからこういう役になるんだ・・・」

蔵「ご苦労様でした。ここからは俺の腕の見せ所ですねvv」

黄「腕だけじゃないだろ・・・腕だけじゃ・・・」









蔵「ふぅ、出来ました!今までに無い新しいスタイルです!」

鈴駒「えっ?今までにないおぞましいものが出来たって?」

蔵「それではお目に掛けましょう!『新生 マッチ売りの少女』ON AIR!」





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